●words from SAYOKO
●第一章 「一度しかない、このまま」の音
●第二章 デジタルとアナログ
●第三章 灰野式DJ方法
●第四章 「気配」が佇む色、黒
●第五章 50年かかって灰野敬二となった

灰野敬二●KEIJI HAINO
1952年千葉県生まれ。日本を代表する前衛ミュージシャン。1971年に日本初のインプロヴィゼーション・バンド「ロスト・アラーフ」を結成。その後、アルト・サックス奏者・阿部薫との「軍楽隊」、自らリーダーを務めるロック・バンド「不失者」など時代によって様々に変化するバンド活動やソロ活動を通じ自らの音楽を探求し続けてきた。デレク・ベイリー、ジョン・ゾーンなど内外を問わず多彩なアーティストとも競演。エフェクトを幾重にもかけたギター・サウンド、パーカッション・パフォーマンス、ハーディ・ガーディ、ヴォーカリゼーションなどにより生み出される音の世界に、聴く者は魂を揺さぶられる。

 灰野さんが創作される音楽にはずっと長い間興味を持ち、CDでその音は聴いていましたし、周りに灰野さんを尊敬する方々が多いこともあって、お話は伺っていました。けれどそのステージを初めて拝見したのは、ほんの1年半くらい前のことです。

高円寺の小さなライブ・ハウスで行われた『生誕ライブ』、それは私にとってまさに衝撃的なものでした。いろいろな機械を駆使して灰野さんが一人で演奏されるソロの作品でしたが、灰野さんの音がどんどん紡ぎ出されていき、ふと気づいたときには3時間もの時が経っていました。終わったときには自分の声すら聞こえない爆音に包まれていたのですが、体中の細胞が満たされるような、そんな充足した感覚を得られたのです。そしてその音楽に向かう何も濁りのない姿勢に、崇高なもの、何か尊いものを見た気がしました。

 それからたくさんのライブに足を運ぶようになったのですが、毎回、スタイルが違うのです。様々な方とのコラボレーションもあれば、弾く楽器も違う。けれど、どのライブを拝見しても、そこには誰にも真似できない、灰野敬二さんにしか出せない音、色合い、世界観が満ちあふれていました。自分の音楽を突き詰め、自分の音を探し続けてまっすぐに歩み続けているその姿は、まるで音楽の中を旅する人のように感じられます。

 今回お話をさせていただけて、一つ新しい発見がありました。そうした灰野敬二さんのすべてを創り出す源は、“無邪気な心”にあるのではないかということです。どんなジャンルであれ、ご自身の表現を確立された方に共通して言えることなのですが、そこには“天真爛漫な無邪気さ”があるように私は思います。それは子供が持つこの世界に対する素直な好奇心や、目の前にあるものに対して無邪気に反応する純真な心と言ってもいいかもしれません。灰野さんの奥にあるその“無邪気な心”が、経験の中で培われてきた価値観や美意識と結びついたときに、あの類い希な音の世界が生まれるのではないかと思うのです。

   
    
 



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