●words from SAYOKO
●第一章 出会ってすぐに意気投合
●第二章 ロバート・アシュレイのオペラ
●第三章 新しいジャンルを進むということ
●第四章 世代を越えて通じ合う感覚
●第五章 面白いことを求めて広がる出会い
 
第三章 新しいジャンルを進むということ

生西 そういえば日本と海外の差ということで。掛川君がアシュレイの作品に関わったのは26歳の時なんです。これは特筆すべき事だと思うのですが、それを日本ではむしろ一切触れないようにしていたんです。

例えば海外で公演すると、当然、最後の舞台挨拶でスタッフも含めて全員、呼ばれますよね。でも、日本でだけは掛川君、最初、呼ばれなかったんですよ。

掛川 (苦笑) 呼ばれなかった。
生西 それに気がついたアシュレイの奥さんのミミ・ジョンソンが彼を舞台に呼んだという。
山口 オペラというと舞台芸術の最高峰、という認識が世界的にあると思うんです。さらにそこには、新しいものをどんどん取り入れていこうという姿勢と、その人が若かろうが、巨匠であろうが、一緒に仕事をしてきちんとした役割を持った人は同じ土俵に立っている、というのが本来のあり方なんだけど。
生西 日本人の26歳の男の子がアシュレイの映像を作っている、ということを表に出すと、その価値を下げるんじゃないかと思われたのかもしれない。日本人の心性の最悪の部分ですよ。西欧コンプレックスの固まり。
掛川 (笑)。
山口 オペラ業界の中ではびっくりだったんでしょうね。びっくりしすぎて説明できない、という形になってしまったんじゃないかと。
生西 説明できないことには、当たり障りのないように、蓋をすると(笑)。
山口 そういうことには負けないで私たちは励んでいかなければいけないな、と思っているんです。
生西 でも……その、触れないでおこう、と思われる立場がずっと続いているような気がするんですけれどもね。
掛川 (笑)。まぁ、でも裏方稼業ですからね。
生西 例えば、コラボレーションにしても、小夜子さん始め大竹伸朗さん、田名網敬一さんであるとか、様々な人たちと本当に色んな事をやっていますけれど、誰にも取り上げられない。というか、それ以前に僕らは存在しないことになっている。現代美術でも、同じ事をずっとやっていないと評価が定まらないっていうのがあるけれど……。
山口 あと、ジャンル。ふつう、すでにあるジャンルに属している、ということろで社会は安心する、というのがあると思うんです。お二人のやっていることは新しいジャンルで、新しいことをやろうとしている人たちは、茨の道を歩まなくてはいけないの(笑)。そこを、いかにめげずに、諦めずに、やり続けるか。続けることによってジャンルが確立する。ーージャンルとして確立することがいいことかどうかは別として。
生西 映像って、鬼っ子みたいな存在なんですよ。アートでもないし。たとえば写真は昔はアートとして認められなかったけれど、100年以上たった最近では、ようやく作品として確立されてきていますよね。でも映像はそうでもない。
掛川 いや、入りつつあるかな。
山口 映像というと、映画やテレビもあるけれど、私たちが見てきた実験映像の歴史は長いんじゃないかしら?
生西 それはたぶん長いし、映像が生まれたときからあると思うけれど、ジャンルとしてはどこにも属していないんですよね。だから、映像に関わっていると「劇映画は撮らないんですか」とよく訊かれる。それがずっとつきまとっていて。劇映画もいいんですけど、どこか映像の最高峰みたいな意識があるのが……。
掛川 なんなんですかね。その映画が最高峰だと思われる、というのは。
生西 いちばんお金がかかるから?
掛川 結局、予算?
生西 映像だけの美術館もないし。
山口 あ、そういえば最近、コンテンポラリー・アートの世界では、ギャラリーに行くと映像作品も多いでしょう。それはここ4,5年で急に増えてきたような感じがするので、さっき掛川君が言ったような状況にはなりつつあるように感じます。
生西 美術の領域に色目を使っている映像は、つまらないものも多いけど。
掛川 (笑)。


    
 



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