●words from SAYOKO
●第一章 プレスリーの点描を描く小学生
●第二章 パソコンと出会いデジタル・コラージュへ
●第三章 隙間、亀裂、ひび、塵の美しさ
●第四章 蓄音機でDJ
●第五章 デジタルとアナログの間

永戸鉄也●Tetsuya Nagato
街中にある何気ない風景から亀裂、錆、ツブ、古い印刷物などあらゆるイメージを緻密に組み合わせ、ダイナミックで硬質な美しさに満ちた世界を創出するデジタル・フォト・コラージュで知られる。1970年に東京に生まれ、幼少時より美術に親しみ、高校卒業後にアメリカに留学。南フロリダ大学を中退したのちNYに渡りバイトをしながら絵と音楽の日々を送る。帰国後にコンピュータとスキャナに出会い、今の作風を確立し作品を公表し始める。03年に『I AGAINST』で文化庁メディア芸術祭デジタルアート部門優秀賞。CD、書籍、雑誌、広告などの分野ではグラフィック・デザイナー、アート・ディレクターとしても活躍。最近は書を解体して手で貼り合わせたアナログのコラージュ作品を発表するなど、デジタルとアナログを往復しながら未だ見ぬイメージを作りあげ続けている。
http://www.nagato.org


 これまでにも永戸さんの作品は、ライブ・イベントやCDのジャケット、展覧会など、さまざまな場面で拝見してきました。デジタル・コラージュされたそれらの作品は、懐かしさと同時に未来を感じさせ、音楽が聞こえてくるようなリズム感があり、繊細でありながらダイナミック。

いちばん印象深かったのは、ある雑誌に掲載した作品でご一緒したお仕事でした。それは「錆」をテーマにしたもので、私を撮った写真に永戸さんが錆をコラージュしていったのですが、ふつう女性向けのCMや化粧品の世界で「錆」といった酸化や劣化を連想させるものは排除・否定されます。けれど、出来上がった作品を見たときに、そこには新しいビューティの形がありました。これは私の中で新しい美として大切にしていきたいものの一つとなっています。

作品には錆のほかにも亀裂や飛沫、裂け目がよく登場しますが、お話を伺うと、もともとそうしたものがお好きだったとか。また「異物と異物を滑らかに結合できるのがデジタル・コラージュの魅力」と言う永戸さんには、どこか“境目”へのこだわりを感じます。永戸さん独特の魅力となっているのはその“境界”を見つめる視線なのかもしれません。

“境界”に惹かれる独特の視線で、ふだん見逃されがちなそうした細かいところに美を見いだし、その美しさをーーカッコよさや力強さなども含めてーー作品として表現する。

最近では、曾お祖父様の書を手と糊でコラージュしたアナログな作品も発表されていますが、アナログの世界とコンピュータの境目に立ち双方の世界を行き来しながら、また新しい美を提示してくれるのではないかと楽しみです。
   
    
 



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