●words from SAYOKO
●第一章 強くなるために! アフリカ縦断一人旅
●第二章 心に引きこもりながら世界にツッコミ
●第三章 清潔好きが受けたカルチャーショック
●第四章 すごくありがたく、すごく困る親切
●第五章 旅の成果
 
   
第一章 強くなるために! アフリカ縦断一人旅

山口 書かれる文章がおかしくてたまらないんだけれど、内容ももちろん、文字の大小を使ったり視覚効果も面白いですね。アフリカの駅前商店街と画面をスクロールすると、一面の砂漠の中に駅と砂の中に放置された廃車がポツンとある写真が現れるとか。あの効果と時間の流れは、人の心理をよく考えて作られているな、と思います。
作者 ホームページという媒体は、すごく幅広い表現のテクニックが使えるんですよね。本当はたいして面白くない文章でも、ネットの特性というか使える武器を最大限使って強調してやれば、ある程度面白くなってしまうんです。ぼくもそうやってうまくごまかしています。ここだけの話ですけど。
山口 でも旅行記の一部は本にもなったんですよね。
作者

それが、本だと一気に小細工が使えなくなるので、webと比べてごまかしが効かずに大変で……なんてことはありません。文章だけで勝負するよう書き変えるのが大変でしたけど、おかげで新しい話や写真なども増え、かなりwebとの棲み分けが出来るようになったと思います。……宣伝ぽいですねこれ。

山口 Webページの構造が縦長の巻物みたいになって、時間軸も含まれているようだから、映像みたいですよね。ほんとうに面白くて、友だちに見て見て、と教えました。
作者

ありがとうございます(涙)。昔、ちょっとだけお笑い芸人を目指して活動していた時期があるんです。だから笑いの部分に関してだけはほんの少しこだわりがあって。
今どき、旅行記のホームページって何千サイトもあると思うんですよ。旅先で会う旅行者も、半数以上が自分のサイトやブログで旅行記を書いているんです。でも別にみんな前人未到の秘境に行ったわけでもないし、宇宙人にさらわれたりという衝撃の体験をしているわけでもない。結局、他の旅行者と同じ場所に行って、この景色が最高だった、あの国の人々とこんなウルルンな触れ合いをした、と書くことになるんです。でも、それはみんなが書いていることなんですよ。そんな中で、ぼくは文章力が特にあるわけでもないし、ネットアイドルを目指せる可愛さがあるわけでも無い。それなら他の人と違うところで勝負しないと誰も読んでくれないだろうと、極端な話、普通の紀行文のようなところは捨てて、面白さだけにこだわるようにしたんです。

山口 お笑い芸人を目指していらっしゃったんですか。まるっきりの素人ではなく、何か文章を書かれるプロの方かと思っていましたが。コンビを組まれたりしていたんですか?
作者 そうですね。そのときはボケ役で、ネタを書くのも担当していました。そのノリのまま旅行記を書いているような感じです。当時のことはあまり思い出したくはないんですが……。
山口 ツッコミかと思ったらボケ役なんですね。旅行記も世界を相手にツッコミをいれているようなところが面白いんですよね。一人で辺境まで行って、郷に入っては郷に従え、という諺をかたくなに拒みつつ、一人でやせ我慢をしながらツッコミを入れている感じがします。
作者

ネタを作る時って、ボケだけでなくツッコミの言葉も含めて考えるんですよ。ツッコミのテンポや選ぶ言葉次第でボケが活かされたり殺されたりする。だからツッコミの言葉を考えるというのは、すごく重要でした。下手をしたら、面白いツッコミのセリフが先に思い浮かんで、そのツッコミをしたいがためにそれに合ったボケを考えるということもあります。その経験は、旅行記を書く上で活かされているかな、とは思います。

山口 確実に活かされてますね。ところで最初に旅に出ようとしたきっかけは何だったんですか。
作者 ぼくは一人っ子で、かなり甘やかされて育ちまして。甘えん坊でわがままなんで、子供の頃からいじめられるタイプだったんですよ。お坊ちゃんな見た目の人っていじめたくなるじゃないですか。ぼくを見てると、なんか意地悪したくなりませんか?。
山口 たしかになりますね。
作者

そんなっ(涙)!!!
……でもまあ、たしかにそういうタイプなんです。よく意地悪される対象になって。で、たまに勇気を出していじめっ子に立ち向かっても、もやしっ子だったんですぐやられるんですよ。全く歯がたたなくて。いじめっ子は毎日休まずイジメをして腕を磨いているんだから、やられて当然ですけど。というか、本当は勇気なんて無かったんで立ち向かったことは無いんですけど。すいません。大体、よくマンガなんかでもやしっ子が奮起してガキ大将に体当たりして、「こ、こいつ初めて俺達に逆らいやがった……。おまえもやるじゃねえか!」なんて認められるシーンを見かけますけど、実際現場レベルでは、勇気を振り絞って反逆ののろしをあげても、イジメの火に油を注いでもっといじめられるだけです。
結局、現実世界がつまらないから、小学校の頃からマリオやドラクエなんかのゲームの世界に逃避してしまって。マリオだったら、敵が亀とか花なんで、ぼくでも倒せるんですよ。何か頭に来たことがあった時は、マリオの世界で亀を踏んで発散していました。そこから引きこもりに近い生活に足を踏み入れたんですけど、インターネットが登場してからは、ますます一人の世界が楽しくなりました。
ただ、そういう部屋にこもってばかりの生活をしていると、社会生活、特に対人関係に支障が出てくるんです。典型的なところでは、なんといっても女性にモテなくて。マルイで店員に薦められるままオシャレなシャツを買ったり、女の子に電話をかけるときにはスムーズに進めるために事前に話す内容を書き出しておいたり、それなりに努力はしたんですけど、結局は引きこもりオーラに気付かれてしまうようなんです。

山口 バレてしまうんですね。
作者 バレます。彼氏募集中の女の子と徐々に仲良くなって、2人で食事も行って、もうこれは落城寸前、堀は埋まった! とか思っても、ある日突然その女の子にフットサル同好会で知り合った彼氏が出来てたりするんです。こっちだってカリスマホストが書いた本を買って、「デートの時に女の子がブーツを履いて来たらお座敷の店は避ける」というような攻略法も学んでがんばってるんです。でも、そうやってコツコツと努力しても、横から趣味がスノボとかのさわやかな男が登場すると、一瞬にして全てかっさらわれて。今までぼくが積みかさねたものは何だったんだ、という(涙)。
そんなことが何度もあって、これはもう小細工なんてやめて、根本的に自分を叩き直さないとダメだと思ったんです。一度自分を崖から突き落として、そして強くなって引きこもりオーラを消そうと。それで旅に出ることにしたんです。アフリカに行けばさすがにわがまま言ってる場合じゃないじゃないですか。暑いだの寒いだの汚いだの、そんな細かいこと言ってたらとても旅なんて出来ないですから。だから、旅をすれば自分も強い側の人間になれるかな、と思って。一応最初は入門編でアメリカから初めて、インド、アフリカ、と難易度を高くしていきました。
山口 じゃあ、強くなろう! と思って旅に出たのね。アメリカに最初は行かれたのね。一人旅?
作者

そうです。アメリカは先進国ですし、そんなに旅をしていて辛いということはありませんでした。ただ旅としては楽でしたけど、突然盲腸にかかってERで手術を受けるハメになったんで旅以外のところではひたすら辛かったですが。

山口 それでインドに行かれて、その次がなぜまたアフリカだったんですか。
作者 インドの次は、中国に行こうと思ったんです。ただ、インドの後、普通に中国に行っただけではステップアップにならないかなと。あくまで自分の中だけなんですけど、なんとなく中国はインドと比べると旅が楽な国、というイメージがあって。それで、なるべく遠くから中国を目指す、ということを考えたんです。日本から直接行ってしまうとありがたみもそんなに無いかなと思って、それで高校の時に使っていた社会科地図帳を眺めて、どこからスタートしようかなと考えて。最初はタイくらいから北上しようかなと思ったんですけど、もうちょっと遠くから、もう少し遠く、もう少しもう少しと思っていたらいつの間にか南アフリカからのスタートになってしまいました。おかげで中国に入国するまで1年以上かかって、もはや中国旅行とは別のものになってしまいましたけど……。
いつも、旅の計画を組む時だけはやる気になるんです。計画ってあくまで想像の中だけですから、なんとでも考えられるじゃないですか。それで勢いで航空券も手配しちゃってから、我に返ってものすごく後悔するんです。


    
 



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